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【映画レビュー】「エゴン・シーレ 死と乙女」“銀のクリムト”と呼ばれたナルシストの生涯・作風。

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エゴン・シーレ 死と乙女

エゴン・シーレ 死と乙女
Egon Schiele   Tod und Mädchen


監督 ディーター・ベルナー

キャスト ノア・サーベトラ、マレシ・リーグナー、ファレリエ・ペヒナー、ラリッサ・アイミー・ブレイドバッハ

作品情報 2016年/オーストリア・ルクセンブルク作品/ドイツ語/109分

配給 アルバトロス・フィルム


初回特典のアートカード。



日本では今年の初めに順次公開されたそうですね。


あらすじ

オーストリアの画家、エゴン・シーレの生涯を、女性たちとの関わりに重点を置いて描いた作品。

舞台は第一次世界大戦末期のオーストリア・ウィーンでスペイン風邪に苦しむシーレと、それを介抱する妹・ゲルトルーデ(ゲルティ)のシーンから始まる。

時は遡り、1910年。ウィーン美術アカデミーを退学したシーレは、妹をモデルにした裸体画でパトロンから一定の評価を得ていた。

そんなとき、彼は場末の演芸場でヌードモデルのモアと出逢う。褐色の肌を持つエキゾチックな彼女をモデルにした大胆な作品で一躍、脚光を浴びる。

その後、敬愛するグスタフ・クリムトから赤毛で青い瞳のモデル・ヴァリを紹介されたシーレは、彼女を“運命のミューズ”として多数の作品を発表。

幼児性愛者という誹謗中傷を浴びながらも、シーレの名は世間に知れ渡り、画家としての成功を収めつつあった。

しかし第一次世界大戦勃発後、シーレとヴァリの関係にも陰りが見え始め…。







エゴン・シーレって何者?

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エゴン・シーレ(1890-1918)

オーストリア・ハンガリー出身。



グスタフ・クリムトに師事。

クリムトと同じウィーン工芸学校を出て、その後ウィーン美術アカデミーに入学するも、

保守的で時代錯誤な同校に魅力を感じなかったシーレは、クリムトに師事し、アカデミーを退学する。

(シーレが入学した翌年と翌々年にはヒトラーも同校を受験しているが不合格となっている。)

クリムトが煌びやかで幻想的な色彩の作品を描いたのに対し、シーレは色がなく無骨な人体を描いたことから、

二人の師弟関係に由来して「銀のクリムト」とも称される。

裸体・性器・死を描いた!

一般にタブーとされるようなモチーフを多く描いた画家。

ヌードといえば豊かな肉づきの人間をモデルとし曲線美や豊潤さが描かれる印象だが、

彼の作品の裸体画は皮膚が青紫色で斑になっていたり、脚の肉や関節はでこぼことしていて、とても美しいとは言い難い。

どれも体がねじれていたり、脚が途中で切断されていたり、作品の特徴として不気味な印象を強く感じる。

日本の春画も参考にしていたらしく、本作でも春画を眺めるシーンがある。


作品制作のためにモデルの娼婦が家を出入りしたり、屋外でモデルを裸にしたり、

また近所の子供たちを家に招いて絵を描いたりしていたため、数回街から追い出される。

また少女誘拐嫌疑及び卑猥な絵画作品が多数見つかったことで、警察に拘留されたこともある。


自画像もたくさん描いた!

“自画像の画家”とも称されるシーレ。

どのような外套でぼくらを覆うとしてもそれは虚無を覆うのと等しいのです、

というのはそういう外被は、他の機関とからみつく欲求を持つかわりにぼくらを隠すのだから。

――ぼくがもし自分を完全に見るなら、ぼくは自分自身を見なければならないだろう、

ぼくが何を欲しているか、何が単にぼくの中で起こるかのみでなく、

いかに遠くを見ている能力をぼくがもっているかをも自ら知るだろう、

またどんな手段がぼくのものであるか、

どのような謎に満ちた実体からぼくが組み立てられているか、

ぼくが認識しているもの、今までぼく自身に関して認識して来たもの、

それらのうちさらにどれだけ多くからか、ということも知るだろう――

(中略)ぼくはこれほど豊かですから、自分を次々と送らなければならないのです。

『エーゴン・シーレ 日記と手紙』大久保 寛二 編訳 2004年 より。

エゴン・シーレがオスカル・ライヒェルに宛てた手紙の一部。

世紀末ウィーンの虚飾で飾り立てる街並みと、物質的な豊かさを求める住人たちの虚構の時代の中で、

自分というものの誉れと恥、美しさと醜さ

しかしそれらが自分の内の世界に本質的に存在すること自体の豊かさや価値に夢中になったために生まれたのがシーレの作品なのではないかと考える。


スキャンダラスな女性関係。

映画「エゴン・シーレ 死と乙女」でも描かれているが、シーレのモデルをしていたヴァリとは恋人(この表現が適格かどうかは微妙だけど)で、長らく同棲もしていた。

しかし彼がウィーンの家の向かいに住んでいたエーディト・アデーレ姉妹と知り合うと、妹のエーディトと結婚を決めてしまう。

シーレはヴァリに、年に1回のバカンスを一緒に過ごす契約を持ちだすが、当然そんな要求が受け入れられるはずはなく、

ショックを受けたヴァリは従軍看護婦に志願し、クロアチアに派遣され、1917年に23歳で病死している。

また妻・エーディトの姉・アデーレとも肉体関係があったとされている。



画家として躍進するも、その直後に28歳の若さで病死。

第一次世界大戦末期、第49回ウィーン分離派展に大量の新作を一挙に公開。それまであまり知名度の高くなかったシーレの作品群は一躍注目を集めた。

シーレの絵の価格は上昇し、要望を受けて次々と絵の買取依頼が舞い込むようになった。

しかし妻エーディトが大戦前後に流行していたスペイン風邪に罹患。シーレの子供を宿したまま死去。

シーレも同じ病に倒れ、妻の家族に看護されたが、妻の死の3日後に亡くなる。






映画の感想。

瀕死の床につくシーレと過去のシーレが交互に映し出されて物語は進んでいくが、

前者が重苦しい雰囲気を醸し出しているため、全体的に暗い印象の作品である。

ただそれだけに過去のシーレの自由奔放で芸術家としての道に励む姿は、人々との出会いや別れ、またそれに伴う精神の迷いに紆余曲折しながらも非常に輝かしく描かれている。

「僕を見て」

作中で絵を描くとき、モデルによくこう指示していた。

モデルを描きながらも、その瞳には自分(シーレ)が映っている。

作品に実際に描かれているのはモデルだが、その視線の先にはシーレがいる、つまり自分の存在を間接的に絵の中に落とし込んでいるのではないか。

随所に散りばめられた色が印象的。

作中では鮮やかなカラーが様々な場面でが印象的に取り入れられている。

例えば青。

作中では、モアがモデルをするときに纏った布(カーテンを切り裂いたもの)、ヴァリのヘアバンド、そしてヴァリの瞳。

この色が他に比べて一段と鮮やかに映っていたので気になった。


あとエーディトが来ていた白黒のワンピース。亡くなった時にも家族が着せていたけれど、生前に着ていた時もどこか不穏な雰囲気の漂う色合いだった。


シーレの美しさが際立つ配役。

実際に美男子という評価があるシーレだが、本作ではそれをさらに際立たせるようにしているのか、周囲の登場人物はあまり美男美女で揃えていないように感じた。

シーレを演じたのはノア・サーベトラ。

これがまた日本人受けするちょいとアンニュイなヨーロッパのイケメン。かっこいい。


シーレが美男子であるというのは、芸術家としても一個人としても、その人生に与える影響は大きかったと思う。

シーレとヴァリの関係性。

作中で語られるシーレとヴァリの関係性についてはなかなか定義し難い。

第一に芸術家とモデルであり、また恋人のようなところもあるが、ただヴァリは結婚には向かないといったシーレの台詞もあり、実際に結婚はしなかった。


劇中において二人の間に度々登場するのが契約である。

一度目は「私は誰とも恋をしない。」と語るヴァリに、じゃあ契約書を書こうとシーレが提案し、実際に書き始めるシーン。

二度めは、エーディトとの結婚を決めたシーレがヴァリに「年に一回バカンスを一緒に過ごす契約にサインしてくれ」と持ちかけるシーン。


ヴァリは妻でもなく恋人でもない、自由な“ミューズ”であり、

シーレが結婚をしようとずっと傍にいてくれる存在であると信じながらも、

繋ぎ止めなければどこかへいってしまう不安と彼はずっと隣り合わせだったのではないか。

父は間違っていなかった、と語るシーレ。

作中では時折、シーレが子供時代の事を思い出すシーンがある。

それは父親が証券を狂ったように燃やしているのを母親が必死で制止するというもの。

実際に彼の父は梅毒に侵されており、精神を病んで半狂乱状態になることもあったとされている。

作中でシーレはそんな父のことを、彼は間違っていなかった、あんなものはただの紙切れだ、と語っている。

このようなところからも、物質的な豊かさを求める当時のウィーンに対する反発が見て取れる。

これぞ芸術家、これぞ芸術的映画。

主人公エゴン・シーレが様々な人物との出会いや時代に翻弄されていき、悩み苦しみ、ときに幸せそうに笑ってみせ、

短い人生をものすごいスピードで駆け抜けていく様は、まさに夭折の天才芸術家の名にふさわしいように思える。

彼が求めた芸術、つまり自己の内面にある生の生々しさから湧き出る美が見事に映し出された作品であったと感じた。





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